声をひそめながらもお嬢が驚いたように声を上げた。 「なにこれ!あたしの自転車じゃないの!」 駐輪場の中の一台に手を置いて、お嬢が再確認する。 間違いないようだ。 聞けば、1年ほど前に自宅マンションから盗まれたという。 女の子なのにレースタイプのゴツい車体を選んだので、 当時仲間からも「お嬢らしいよ」とからかわれていた自転車だ。 それが何故こんなところに? 「あ、その自転車。あいつが乗ってるの見たことがある。」 ひとりがぼそっと言った。奴の出勤途中の姿をよく見かけたらしい。 お嬢の自転車を知らなかったので今まで気にもしなかったという。 「あのバカ・・・・」 だんだんと皆の顔にも怒りがこみ上げてきた。 呆れかえっている顔も見えた。 夕方、一度このマンションに荷物があることを確認しに来たときには 残念ながら自転車があったかどうかは確認していなかった。 だから今、部屋にあいつが帰ってきた確証には繋がらない。 リフォーム業者に訪ねてみる他はなさそうだ。